当研究室では、自然免疫に着目し、ウイルスに対する自然免疫応答や、ワクチン投与後の副反応が生じるメカニズム、がんの免疫療法、加齢による免疫システムの変化などを研究しています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどのウイルスに感染すると、最初に自然免疫が働きます。この自然免疫応答の中でも、強い抗ウイルス作用を持つI型インターフェロンの産生が特に重要です。
私たちの研究室では、このウイルス感染初期のI型インターフェロン産生の分子メカニズムの研究をしています。これまでに、細胞のエンドソーム内でウイルス由来の二重鎖RNAを認識するTLR3の研究から、TLR3のアダプター分子としてTICAM-1(別称TRIF)を発見しています。また、細胞質内のウイルスRNAを認識するRIG-I分子について、その活性化を制御するユビキチンリガーゼとしてRiplet分子を発見しました。実際に、TICAM-1分子を失うとポリオウイルス感染に弱くなることや、Riplet分子を失うと様々ウイルス感染に弱くなることを動物実験で発見しました。
このような自然免疫はヒトでも重要であることがわかってきています。新型コロナウイルスはこのような自然免疫応答が働かないように、ウイルスタンパク質が自然免疫を強く抑制することも報告されています。自然免疫のメカニズムを解明することは、ウイルスに対する治療薬開発や新たな治療法の開発の基礎となるとして注目されています。
主な研究テーマ
・ウイルス感染に対する自然免疫
・自然免疫を利用した新しい治療薬の開発。
HPVワクチンや新型コロナワクチンなど、感染症から私たちを守るワクチンは非常に大切なものとして使われています。一方で、ワクチンの効果が高齢者では十分でない場合があることや、副反応が強い場合があるなど、ワクチンの改良についても求められています。私たちの研究室ではワクチンが働く仕組みについて研究しています。
インフルエンザワクチンの研究からは、高齢者の予防効果を高める方法を新たに開発しました。また、新型コロナワクチンの研究から、副反応の強さの原因の一つがTNF-αと呼ばれるサイトカインであることを発見しています。このようなワクチンの副反応や次世代の新しいワクチンの開発をしています。
主な研究テーマ
・高齢者向けワクチンの開発
・HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の研究
・次世代のRNAワクチンの開発。
加齢とともに免疫応答が低下することは古くから知られています。一方で免疫応答そのものが老化の原因となることも知られています。IL-6などの炎症性サイトカインは細菌やウイルスの感染によって体内で産生されますが、老化とともに平常時にも少しずつ産生されるようになります。このIL-6そのものが老化を促進するという話もあります。
ヒトの寿命は100年ほどになっていますが、これは20世紀に入ってからです。19世紀以前のヒトの寿命はこれほど長くありませんでした。その理由についてはわかっていませんが、私たちは免疫応答が関係していると考えています。20世紀に入り、抗生物質が発見され、また、ワクチンが開発されたことで、日常生活の中で重篤な感染症にかかる機会が減っています。そのため免疫応答も生じなくなってきています。そのことがヒトの寿命が延びたことと関係があるのではないかと考え研究しています。
主な研究テーマ
・感染症と老化の関連
・感染症の克服とともに寿命が延びたメカニズムの解明
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